ヴァレンティーナ・リシッツァ

ピアノ、編作

ヴァレンティーナ・リシッツァは、最新のデジタル技術を活用してクラシック音楽とその演奏を広め、インターネットで最も視聴されているクラシック音楽家の一人となった。バッハやモーツァルトからショスタコーヴィチやバーンスタインに至るまで、多様で膨大な数のレパートリーを自在に奏でるリシッツァは、協奏曲だけでも40曲以上のレパートリーを誇る。とりわけラフマニノフとベートーヴェンの音楽に特別な親近感を抱く彼女は、毎年、自身の膨大なレパートリーを増やし続けている。 1973年にウクライナのキエフ (キーウ) で生まれたリシッツァは、3歳でピアノを弾き始め、その1年後に初のソロ・リサイタルを行った。才能のある子供のためのルイセンコ音楽学校に入学し、後にキエフ音楽院でリュドミラ・ツヴィエルコに師事した。1991年、アレクセイ・クズネツォフとともにマレイ・ドラ ノフ国際2台ピアノ・コンクールで優勝した。翌年にクズネツォフと結婚し、アメリカ移住という大きな賭けに出た。1995年、リシッツァはリンカーン・センターで開催されたモストリー・モーツァルト・フェスティバルでニューヨーク・デビューを果たし、以来、ロンドンのウィグモア・ホールやウィーン楽友協会など世界中のホールで精力的に演奏している。 リシッツァのキャリアは、その低迷期に華々しく再燃することになる。2006年に夫クズネツォフが彼女のショパンの練習曲集の演奏を撮影し、DVDを自宅で作成してアマゾンで発売したところ、夫婦のYouTube投稿をきっかけに、この未編集の映像の売り上げが急増したのである。オンライン上で国際的な名声を得たリシッツァは、YouTube動画でファンを増やした。2012年に大きな注目を集めたロイヤル・アルバート・ホールでのリサイタルでは、聴衆が聞きたい曲目を事前にオンラインで投票することができた。このような聴衆参加型の公演形態は、リシッツァの活動の特徴の一つとなっている。同年、彼女はデッカ・クラシックと専属録音契約を結んだ。 2013年、リシッツァはベルリン・フィルハーモニーの大ホールにデビューし、ヨーロッパ各地、ワシントン、ブリスベン、ソウルでリサイタルを行った。ニューヨークのカルチャー・センター「92nd Street Y」のシーズン開幕公演では、再びオンライン上で聴衆が選んだプログラムを演奏した。協奏曲のソリストとしても活躍の機会を広げ、アメリカ各地、メキシコシティ、香港、台湾、ロンドンのBBCプロムスで演奏している。その他の活動のハイライトとして、パリのシャンゼリゼ劇場、モスクワ音楽院大ホール、ロンドンのウィグモア・ホール、ミュンヘンのプリンツレーゲンテン劇場、ニューヨークのカーネギー・ホール、北京の国家大劇院(NCPA)、ボゴタのマヨール劇場での演奏、プラハ・ドボルザーク音楽祭やブリュッセルのムジカ・ムンディ国際室内楽音楽祭への出演が挙げられる。これまでソリストとして、ロンドン交響楽団、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団、パリ管弦楽団、リエージュ王立フィルハーモニー管弦楽団、ドレスデン・シュターツカペレ、カスティーリャ・イ・レオン交響楽団、シンシナティ交響楽団、ボルティモア交響楽団、ソウル・フィルハーモニックと共演した。リシッツァは2020年、いっそうじかに聴衆に演奏を届けることを目指し、自主レーベルQORを設立した。