ジョシュア・ベル

ジョシュア・ベル

ヴァイオリン

およそ40年にわたるキャリアを誇り、グラミー賞も受賞したヴァイオリン奏者ジョシュア・ベルは、同世代中、最も名高い演奏家の一人である。世界のほぼ全ての主要オーケストラと共演してきた彼は、ソリスト、リサイタル奏者、室内楽奏者、指揮者としての顔を持ち、2011年からはアカデミー室内管弦楽団(アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ)の音楽監督も任されるなど、精力的な活動を続けている。 同団はサー・ネヴィル・マリナーが1959年に創設し、2011年まで音楽監督を務めたオーケストラである。 1967年にインディアナ州ブルーミントンで生まれたベルは、4歳でヴァイオリンを始め、12歳でジョーゼフ・ギンゴールドの薫陶を受けた。 14歳でリッカルド・ムーティ指揮フィラデルフィア管弦楽団との共演でデビュー。セントルイス交響楽団との共演で17歳の時にカーネギー・ホールへのデビューを果たした。翌年、最初のレーベルであるロンドン・デッカと契約を結び、エイヴリー・フィッシャー・キャリア・グラントを受賞した。1998年、ジョン・コリリアーノが作曲を担当した映画『レッド・バイオリン』のサウンド・トラックの録音に参加したベルは、一躍有名になり、コリリアーノのアカデミー音楽賞の受賞を後押しした。その後ベルは、『ミュージカル・アメリカ』誌の「インストルメンタリスト・オブ・ザ・イヤー」と、世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーに選出され、グラミー賞に6回ノミネートされ、エイヴリー・フィッシャー賞も受賞している。 また、インディアナ州知事芸術賞を授与され、ジェイコブズ音楽院からは社会に貢献した傑出した卒業生としてディスティングイッシュド・アラムナイ・サーヴィス・アワードを贈られ、インディアナ・リヴィング・レジェンドにも選出された。 ベルの近年の活動のハイライトとして、アカデミー室内管弦楽団を率いてのBBCプロムス出演とヨーロッパ各地およびアメリカでのツアーの他、ヴェルビエ音楽祭でのフィラデルフィア管弦楽団との共演(弾き振り)、ミネソタ管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニックとの共演が挙げられる。またソリストとして、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団とNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団のツアーに参加した。ベルは、歴代の3人のアメリカ大統領、および米国連邦最高裁判事のために演奏した経験がある。 バラク・オバマ前大統領の芸術・人文科学委員会が初めてキューバに派遣した文化使節団に参加したベルは、キューバとアメリカの音楽家たちとともに、両国の文化外交の再開を祝った。 ベルは、ルネ・フレミング、チック・コリア、レジーナ・スペクター、ウィントン・マルサリス、クリス・ボッティ、アヌーシュカ・シャンカール、フランキー・モレノ、ジョシュ・グローバン、スティングなど、多彩なジャンルのアーティストと共演してきた。『ラヴェンダーの咲く庭で』や『ディファイアンス』などの複数の映画にも携わっている。またイェ・ツンの指揮の下、中国の伝統楽器を用いるシンガポール・チャイニーズ・オーケストラとソリストとして2度共演し、西洋のレパートリーと、中国の最も有名なヴァイオリン音楽の一つであるヴァイオリン協奏曲《梁山伯と祝英台》を演奏した。2019年、ベルは長年の友人であり演奏パートナーであるチェリストのスティーヴン・イッサーリスとピアニストのジェレミー・デンクとともに、トリオとしてアメリカ10都市で演奏した。同時代の作曲家への作品委嘱にも積極的に取り組んでいるベルは、ジョン・コリリアーノ、エドガー・メイヤー(二重協奏曲)、ベフザド・ランジバランの協奏曲を初演した。ベルが初演し録音したニコラス・モーのヴァイオリン協奏曲はグラミー賞に輝いた。これまでベルは40枚以上のアルバムをリリースし、グラミー賞、マーキュリー賞、グラモフォン賞、オーパス・クラシック賞などを受賞。アカデミー室内管弦楽団との共演によるアルバムは、ビルボード・チャートで初登場1位となった。 ベルのテクノロジーへの関心は、ヴァーチャル楽器のサンプリング企業「Embertone」との提携につながった。またベルは、独自の音楽教育カリキュラムを開発するため、最先端の技術を活用したヴァイオリン学習アプリ「Trala」とも活動を行っている。ベルが積極的に関与している「Education Through Music」と「Turnaround Arts」は、クラシック音楽をじかに体験しにくい環境にある子供たちに楽器と芸術教育を提供する団体である。ベルは2019年、芸術教育への尽力を称えられ、ドレスデン音楽祭にてグラスヒュッテ・オリジナル音楽祭賞を贈られた。使用楽器は、かつてフーベルマンが弾いていた1713年製のストラディヴァリウス。