マキシム・ヴェンゲーロフ

マキシム・ヴェンゲーロフ

ヴァイオリン

マキシム・ヴェンゲーロフは、同世代中、最も優れたヴァイオリニストの一人として世界的な名声を博し、その超絶技巧、華麗な音色、そしてリスクをいとわない冒険的でカリスマ的な演奏によって高く評価されている。 彼は怪我による演奏活動の休止期間中に、かねてから興味を抱いていた他の分野を探求する機会を得、やがて屈指の指揮者および教師にもなった。ユダヤ系ロシア人であるヴェンゲーロフは、現在、演奏・指揮・教育の全3分野で成果を挙げており、その活動は、グラミー賞、ブリット・アワード、グラモフォン賞など、数々の権威ある賞により称えられている。また彼は、ユニセフ親善大使に任命された初のクラシック音楽家でもある。2021年には、若い音楽家たちを対象とする教育プログラムを自らインターネット上で立ち上げ、世界中の演奏家たちに無料で指導を受ける機会を提供するなど、活動を続けている。 1974年、シベリアの文化的中心地ノヴォシビルスクで、音楽家の両親の下に生まれた。5歳の時、公の場でヴァイオリンを弾き始め、5年後にはポーランドで開催されたヴィエニャフスキ国際コンクールのジュニア部門で優勝し、国際的な注目を集めるようになった。1990年、ロンドンで開催されたカール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝したのを機に、自身初のレコーディング契約を結んだ。ガリーナ・トゥルチャニノーヴァとザハール・ブロンに師事したヴェンゲーロフは、ロシアの偉大なチェロ奏者ムスティスラフ・ロストロポーヴィチから薫陶を受けた。かつて彼はロストロポーヴィチについて、「私にとって祖父のような人です。私の音楽的視野を広げ、私をショスタコーヴィチやプロコフィエフといった作曲家たちに――まるで彼らが今も生きていて実際にそこにいるかのように――引き合わせてくれました」と述べている。ヴェンゲーロフは、ショスタコーヴィチとプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲の録音について話し合うため、ロストロポーヴィチと初めて会った。その結果生まれたアルバムは、ヴェンゲーロフが1990年代に発表し称賛された多くの協奏曲の録音の一つとなった。彼はシベリウス、チャイコフスキー、ブラームス、ドヴォルザークの協奏曲も録音しており、これらロマン派の偉大なヴァイオリン協奏曲は、ヴェンゲーロフの十八番として知られている。ソリストとして、ニューヨーク・フィルハーモニック、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団など世界屈指のオーケストラから引く手あまたのヴェンゲーロフは、近年ではパリ管弦楽団、ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、シドニー交響楽団、メルボルン交響楽団などのシーズン開幕公演に出演している。また、オックスフォード・フィルハーモニー管弦楽団、クイーンズランド交響楽団、アルメニア国立交響楽団、ロンドンのバービカン・センター、英国のラジオ局「クラシックFM」など、数多くのアンサンブルや組織のアーティスト・イン・レジデンスも任されている。 しばらくヴァイオリン演奏を休止し、指揮に専念したヴェンゲーロフは、モスクワのイッポリトフ=イワノフ国立音楽教育研究所でユーリ・シモノフに師事。同所を優等な成績で卒業し、大学院に進んだ。在学中にグシュタード音楽祭の初の首席指揮者に就任し、以来、シドニーからトロントまで世界各地のオーケストラに指揮者として客演。多忙なコンサート活動に加え、現在はザルツブルク・モーツァルテウム音楽院とロンドンの王立音楽院で教鞭も執っている。